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【2025年最新】相続登記義務化と不動産売却3,000万円控除とは?
2024年4月から「相続登記の義務化」が施行され、相続不動産を放置するリスクが高まっています。さらに、相続した空き家を売却する際には、最大3,000万円の税控除が受けられる制度があることをご存じですか?
これらの制度は知らないと損をする重要な制度です。
本記事では、相続登記義務化の概要と3,000万円特別控除を、わかりやすく解説します。
相続登記の義務化とは?
相続登記義務化の背景と施行時期
2024年4月1日より、相続によって取得した不動産に対して「相続登記」が義務化されました。
これは、近年社会問題となっている所有者不明土地や空き家の増加に対応するため、法改正によって導入された制度です。
従来、相続登記は義務ではなかったため、相続された不動産の名義が亡くなったまま放置されるケースがありました。
その結果、誰が所有者か分からず、売却・活用・管理ができない土地が全国に広がり、地域の防災や再開発、税務処理にも支障をきたしていたのです。
今回の法改正により、相続が発生した際には、自己のために相続の開始があったことを知った日から3年以内に、登記申請を行うことが義務付けられました。
また、遺産分割協議が成立した場合は、その日から3年以内に登記申請を行う必要があります。
対象者・期限・過料について
相続登記の義務化は、すべての相続人が対象です。
相続人のうち誰か一人でも登記を行わなかった場合、義務違反と見なされる可能性があります。
また、期限である「3年以内」に登記申請をしなかった場合、10万円以下の過料(行政上の罰金)が科される可能性があります。
これは刑事罰ではありませんが、正式な行政制裁として履歴に残るため、注意が必要です。
ただし、すべての場合に無条件で過料が科されるわけではありません。
正当な理由(※)があると判断される場合には、過料の対象外となる可能性があります。
※正当な理由の例
(1)相続人が多数おり、連絡や合意形成に時間がかかる
(2)相続内容に争いがあり、調停や裁判中である
(3)遺言の有効性について意見が分かれている
(4)申請義務を負う相続人自身に重病等の事情がある場合 など
2024年4月1日より前に相続が発生していた不動産についても、義務化の対象となります。
ただしこの場合、すぐに過料が発生するわけではなく、2027年3月31日までは猶予期間として、過料は適用されません。
それまでに登記を済ませておくことで、ペナルティを回避することが可能です。
相続登記の手続きと必要書類
相続登記の申請は、次のような手順で進みます。
①相続の発生確認と相続人の確定
戸籍謄本などを取得し、法定相続人を確定します。
②遺産分割協議の実施または法定相続の選択
遺産をどう分けるかを話し合い、合意内容を「遺産分割協議書」にまとめます。
協議が行われない場合は、法定相続割合に基づく登記も可能です。
③必要書類の準備
以下の書類が必要となります。
- 被相続人の戸籍(出生~死亡まで)
- 相続人全員の戸籍・住民票
- 不動産の登記事項証明書
- 遺産分割協議書(ある場合)
- 固定資産評価証明書
- 相続関係説明図
④法務局へ登記申請
必要書類をそろえたら、相続登記の申請を行います。
郵送・窓口・オンラインでの申請が可能です。
3,000万円(空き家)特別控除とは?
相続した空き家を売却する際、一定の条件を満たすことで、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例制度があります。
これは「被相続人居住用家屋等に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」と呼ばれ、空き家問題の解消や中古住宅の流通促進を目的に導入された制度です。
この特別控除の対象となる不動産は、以下のすべての条件を満たしている必要があります。
1.昭和56年5月31日以前に建築された一戸建て住宅であること
旧耐震基準で建てられた住宅が対象で、マンションなどの区分所有建物は対象外です。
2.相続開始直前まで被相続人が居住しており、他者の居住実績がないこと
生前に被相続人が実際に住んでいたことが求められ、賃貸していたり、他の人と同居していた場合は対象外となります。
3.相続開始から売却(譲渡)までの間、空き家状態を維持していたこと
譲渡するまでの間に他人が住んでいたり、賃貸に出したりしていた場合は、控除が受けられません。
被相続人が老人ホームに入居していた場合も対象になる?
被相続人が亡くなる前に老人ホームなどの施設に入所していたケースでも、この控除が適用される場合があります。
ただし、以下のような追加要件を満たす必要があります。
・老人ホーム入居前までその家屋に居住していた
・入所後も家財が残っており、居住の意思が継続していたと認められる
・施設への入所が要介護・要支援認定に基づくものであること など
上記の場合でも、控除対象かどうかは慎重な確認が必要です。
国土交通省のガイドラインや各自治体、税理士への相談を通じて判断することをおすすめします。
最大3,000万円控除が適用されるケース
空き家特例は、相続人が不動産を単独で相続して売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できるという大きなメリットがあります。
売却益に対する課税所得を大幅に減らすことができ、税負担の軽減に直結する非常に有利な制度です。
ただし、2024年1月1日以降の譲渡分から制度が一部見直されており、相続人が複数で共有相続している場合には、1人あたりの控除額が最大2,000万円に引き下げられました。
・単独で相続し売却した場合
→ 最大3,000万円の控除が可能(旧制度と同じ)
・相続人が3名以上で共有相続して売却した場合
→各相続人ごとに最大2,000万円の控除が適用される(2024年以降の売却分から適用)
「いつ譲渡したか」や「相続の方法」によって適用される控除額が変わるため、売却のタイミングと持ち分構成をよく確認する必要があります。
複数いる場合の控除額と注意点
不動産を共有持分で相続した場合、譲渡所得に対して適用される控除額も、各人の持分に応じて按分されます。
たとえば、被相続人の不動産を2人で相続し、それぞれ50%ずつの持分で登記されている場合、それぞれに対して適用される控除額は最大2,000万円までになります。
注意すべき点として「家屋は兄の名義」「土地は弟の名義」など、登記上で名義が分かれているケースでは、この特例が適用されない場合があることです。
この場合、制度上の条件を満たさないと判断される可能性があるため、登記の仕方にも十分な注意が必要です。
詳細は、不動産税務に詳しい税理士や司法書士、信頼できる不動産会社などに相談しましょう。
控除を受けるための手続きと確定申告のポイント
特別控除を受けるためには、譲渡後の確定申告時に「被相続人居住用家屋等確認書」を添付する必要があります。
この確認書は、不動産の所在地を管轄する市区町村の窓口で発行してもらうことができます。
【申請に必要な書類】
・被相続人の住民票の除票
・建物の登記事項証明書
・固定資産評価証明書
・家屋に他者の居住がなかったことを証明する書類(介護保険証など)
確認書の交付申請には通常2週間程度かかるため、確定申告の時期を見据えて早めに準備を進めておくことが大切です。
相続登記と売却のタイミング
登記を済ませないと売却できない理由
不動産を売却する際、まず前提として必要なのが「所有者であることの証明」です。
しかし、相続が発生したまま名義変更(相続登記)を行っていないと、その不動産の所有者は法的には被相続人のままであり、売却することはできません。
つまり、どれだけ高く売却できる買主が見つかったとしても、相続登記を済ませていなければ契約締結も決済も不可能なのです。
登記未了のまま長期間放置してしまうと、次のようなリスクがあります。
・他の相続人との合意形成が困難になり、手続きが複雑化する
・不動産の価格が下落するリスクがある(市場タイミングを逃す)
・義務化後の制度により、過料(最大10万円)を科される可能性
したがって「売却を考えている=すぐにでも相続登記を済ませる必要がある」という認識が重要です。
登記から売却までにかかる期間
実際の手続きとして、相続登記を完了させた後に売却を進める場合、全体で2〜6か月程度の期間を見込んでおくと安心です。
以下は、一般的な流れとそれぞれにかかる期間の目安です。
手続き項目 | 目安期間 |
---|---|
相続人の確定・遺産分割協議 | 1〜2か月 |
必要書類の収集・登記申請 | 1〜2週間〜1か月 |
登記完了後の売却活動 | 1〜3か月(物件による) |
契約締結・引渡し | 約1か月 |
相続人が多数いて連絡が取れないケースや、遺産分割で揉めているケースは、相続登記自体がスムーズに進まず、売却までのスケジュールが大幅に遅れる可能性があります。
税制メリットを最大化するための戦略
3,000万円特別控除などの税制優遇を最大限活用するためには、登記と売却のタイミングをしっかり計画することがカギです。
・登記完了から売却までのスピードを意識
空き家のままにしておくと固定資産税や維持費がかかるため、早期売却が経済的メリットにつながる。
・確定申告の時期を見据えて売却スケジュールを調整
3,000万円控除は譲渡所得に対しての控除であるため、売却した年の翌年の2月16日〜3月15日に申告が必要。
・税務や法務のプロと連携して進める
申告ミスや登記漏れがあると、せっかくの控除が適用されないリスクがある。
加えて、特例を受けるための「被相続人居住用家屋等確認書」の発行にも時間がかかるため、売却準備と並行して必要書類の取得を進めることが理想的です。
不動産売却の際に専門家に相談すべきケース
相続した不動産の売却には、相続登記や税制優遇の申請など、複雑な法律・税務の手続きが絡むため、状況によっては早い段階で専門家の力を借りることが必要です。
以下のようなケースでは、司法書士・税理士・不動産会社などの専門家に相談することを強くおすすめします。
1.相続人が複数いて話し合いがまとまらない
相続人が2人以上いる場合、遺産分割協議によって不動産の扱いを決める必要があります。
意見が食い違ったり、連絡が取りづらかったりすると、協議が長引き、登記や売却が先に進まなくなります。
このようなときは、司法書士や弁護士に調整役を依頼することで、冷静かつ法的に正しい手続きが行いやすくなります。
2.登記や税務の手続きが複雑で不安がある
「登記ってどうやってやるの?」「税金の申告って必要?」
このような不安を持つ方は非常に多くいらっしゃいます。
・複数の不動産を相続した
・相続人が遠方に住んでいる
・被相続人の遺言がある or 遺言が複雑
・空き家特例を受けられるかどうか微妙なラインにある
こうした場合、司法書士が登記を代行し、税理士が確定申告書を作成してくれるため、スムーズかつ確実に手続きを進めることができます。
3.できるだけ早く売却したい場合
急な出費や空き家の維持費などから、できるだけ早く売却したいと考える相続人も少なくありません。
しかし、相続登記が完了していない、売却に必要な書類が足りない、控除の申請漏れがあるなどの状態では、せっかくの売却チャンスを逃してしまうことにもなりかねません。
専門家に相談すれば、売却までの工程を逆算し、必要な手続きを同時進行でサポートしてくれるため、早期売却が実現しやすくなります。
4.税金や控除制度を最大限に活用したい場合
3,000万円特別控除をはじめ、相続不動産の売却には多くの税制優遇がありますが、要件を1つでも満たさないと適用されません。
「控除対象かどうか分からない」 「確認書の申請タイミングを逃した」 「誤って他の相続人と違う申告内容にしてしまった」 などのミスを防ぐには、税制に精通した専門家のチェックとアドバイスが不可欠です。
まとめ
2024年からスタートした相続登記の義務化と、相続した空き家を売却する際に適用される3,000万円特別控除。この制度は、どちらも知らないまま手続きを進めると、時間的ロスや金銭的損失につながる恐れがあります。
これから相続不動産の売却を検討している方は、まずは現在の状況を把握し、登記や控除の要件をしっかり確認することが大切です。
不安がある場合は、司法書士・税理士・不動産会社などの専門家へ早めに相談することが、成功への近道です。制度を正しく理解し、後悔のない売却を目指しましょう。
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