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親が認知症になると家が売れなくなるって本当?実家の処分にお困りのご家族様へ

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売却の流れ

2023.10.31

親が認知症になると家が売れなくなるって本当?実家の処分にお困りのご家族様へ

2023.10.31

親が認知症になると家が売れなくなるって本当?実家の処分にお困りのご家族様へ売買の窓口】

日本では現在、高齢化の進展とともに、認知症患者数も増加しています。「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、65歳以上の認知症患者数は2020年に約602万人、2025年には約675万人(有病率18.5%)と5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。こうした中、在宅介護が難しいときには介護施設の入居を検討されるケースも多くあります。

介護施設に入所するために実家を売却しようとしたところ、親の認知症が重くなり判断能力が大きく低下してしまったために、実家を売却できないケースがあることをご存知でしょうか。

本記事では、認知症の親が所有する不動産を売却する際の方法、そして関連する制度を解説します。


認知症の親が所有する家を売却する際の確認事項

親の認知症の進行度合い

不動産売却において、当事者の本人確認及び意思確認は司法書士が行います。認知症の進行に伴い、親の判断能力が低下することは避けられませんが、司法書士が売却の意思確認や本人確認を行った際の返答に問題がなければ、認知症の症状が一部見られたとしても売却可能と判断してもらえる場合もあります。

民法第3条2項には、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」と明記されていますので、例えば、父親が所有する住まいの売却を考えたとします。この時に所有者である父親の判断能力が著しく低下していた場合、父親を売主とする売却は難しくなります。

改正民法第3条の2


実家の名義を確認

まずは、実家の名義を登記簿謄本や法務局に行き確認しましょう。認知症でない方の親名義になっていた場合は、問題なく売却することができます。


代理人による不動産売買契約

例えば長期入院中など、何らかの理由で、所有者による不動産手続きが困難な場合があります。この場合、委任状を作成すると、本人の代わりに不動産売買の契約ができます。つまり、身体的な能力に問題があっても、判断能力に問題がなければ不動産売買の手続きは可能です。

しかし、判断能力が著しく低下していた場合は例外です。意思能力を欠いた方の委任状は、代理人が親族であっても認められません。

認知症の症状が進み判断能力が低下した場合は、成年後見制度を利用しましょう。 以下で詳しく解説します。


成年後見制度とは

成年後見制度とは、知的障害・精神障害・認知症などによってひとりで決めることに不安や心配のある人や、自らの財産や生活に関する判断が困難になった場合、代わりに契約の締結や財産管理を支援、保護する制度です。この制度を利用することで、本人の意思に代わって、財産管理や健康、福祉に関する意思決定を後見人が行うことができます。

例えば、本人名義の預貯金等の管理・不動産の管理等の財産管理を行います。 確定申告や、場合によっては生活保護の申請を行うこともあります。 また、介護契約・施設入所契約・医療契約などの本人の身上監護を目的とした事務も行います。

成年後見制度を利用して実家売却をするメリットは、重度の認知症の場合でも不動産売却が可能になります。 また、原則として本人の利益につながる行為のみ可能なため、財産を守ることができます。

成年後見制度は、任意後見制度と法定後見制度があります。それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。


任意後見制度

任意後見制度とは、認知症などが進行する前(本人がまだ判断能力を有している段階)に、将来的な判断能力の低下や意思能力の喪失を予測し、自らの意志であらかじめ後見契約を結ぶことができる制度です。後見の内容、範囲、方法などを本人が具体的に定めることができます。例えば、特定の財産の管理だけを後見人に委託することや、日常生活の一部を後見人に任せることも可能です。

任意後見制度は、将来的な判断能力の低下を予測しており、自分の意思で後見人を任命できるため、安心して生活を送ることができます。

任意後見契約を結ぶためには、公証役場で公証人の立会いのもと、契約書を作成する必要があります。契約が成立すると、公証役場に契約書が保存され、必要に応じて関連機関や関係者に通知されます。この制度を利用することで、自らの意思で将来を見据えた準備を行い、後見人による支援を受けることができるようになります。


法定後見制度

法定後見制度とは、認知症などが進行し本人の判断能力が低下したために自らの意思表示や法律行為が困難になった場合、家庭裁判所の判断によって後見人、保佐人、または補助人が選任され、本人を法的にサポートする制度を指します。

法定後見人として認められるのは、親族や司法書士、弁護士、社会福祉士などで、職業や経歴、本人との利害関係などをもとに裁判所によって選ばれます。未成年や破産者、本人に対して訴訟を起こしたことのある人などは法定後見人として認められません。

法定後見制度には、家庭裁判所の介入が必要です。家庭裁判所は、専門家の意見を基にして本人の判断能力の有無を判断し、後見人等を選任します。判断能力が低下した成年者の権利を守るとともに、その人の生活を支援することが目的です。家庭裁判所への申し立てには数十万円の費用がかかるります。

しかし、重度の認知症患者の場合は、法定後見制度を利用するほかに本人以外が不動産を売却できる方法がありません。

その他、本人が行った不利益な契約を結んでしまった場合も、法定後見人が解除できます。この不利益な契約の無効化は、任意後見制度や後述する家族信託の制度では行えないので、法定後見制度ならではのメリットといえるでしょう。


判断能力がある場合は家族信託を活用

家族信託とは、家族による財産管理の一つの手法です。認知症の発症など老後に備えてあらかじめ信頼できる家族に、財産の管理や処分を任せる制度です。


家族信託のメリット

1.成年後見制度よりも柔軟な財産管理が可能

家族信託では、成年後見制度よりも柔軟な財産管理ができます。任意後見人による財産管理は、裁判所の監督下のもとでの財産保全が求められるため、現実的には本人の理想どおりに活用されづらいという点があります。 家族信託では、成年後見制度よりも柔軟な財産管理ができます。そのため、家族信託に比べるとやや自由度は低く、より自由度の高い財産管理を望む場合は、家族信託の利用を検討したほうがいでしょう。


2.認知症になっても財産管理を継続できる

通常、金融機関は、認知症によって判断能力を失っていると判断すると、預金を引き出したり金融商品を解約したりできなくなる「資産凍結」を行うことがあります。 資産凍結されると、本人だけでなく家族も資産を動かすことができない状態となります。

しかし、家族信託を締結し財産管理を家族に託しておけば、本人の判断能力を失っていると判断されても、その効力が否定されることはありません。


家族信託のデメリット

1.身上監護の契約ができない

身上監護とは、判断能力のない本人に代わって、介護施設の入居・治療や入院など、本人の身の上に関わる契約手続き(法律行為)を行うことを指します。成年後見人には、生活全般にわたって、本人の身上を保護する義務がありますが、家族信託ではこの契約はできません。


2.相談できる専門家が少ない

家族信託は平成18年(2006年)の信託法改正により、翌年の平成19年に施行された比較的新しい制度です。そのため相談できる専門家が少ないという現状があります。家族信託を検討する際は、実績のある専門家を見極めることが大切です。


認知症の親の不動産売却で起こりうるトラブル

勝手に不動産を売却をする

認知症で判断能力がないにもかかわらず、兄弟や親族の許可なく勝手に親の不動産を売却してしまうケースがあります。 親が認知症である場合、法的に契約を結ぶ能力を持っていない可能性が高くなります。判断能力・意思能力がなければその契約は無効とされ、違法行為とみなされることがあります。これには民事訴訟のリスクが伴います。


不動産を売買させる

認知症の親に不動産を売買させても意思能力がないと判断されれば契約は無効になります。強引に進めても、親族間でお金のトラブルに発展する可能性がありますので注意しましょう。


まとめ

親が認知症になった場合でも、法定後見制度を活用すれば不動産の売却を進めることは可能です。しかし、本人の意思を尊重し円滑に話を進めるためには、親が認知症となる前から今後を見据えた話し合いが重要と言えるでしょう。


不動産の売買でお困りの方は、売買の窓口までお気軽にご相談ください。